一周年記念 特別講演 『Yukariko☆雪子☆雪だるま』（後半）

（続き）

「ああ、どうもありがとうございます。このご恩は死んでも忘れません。」

Yukarikoから大金を貰った娘は、生き返ったような気持ちに
なって、急いで東地区の店へ帰っていきました。

一方、店の御主人は妹の帰りが遅いから心配でたまりません。

「まったく･･･、まだ帰ってこない･･･帰ったら、よ～～く、言って聞かせなきゃ」

と心配していると、


たったったっ･･･

「ただいま～です。」

「まったく～～、どこに行ってたの？」

「途中で、友達に会って、挨拶代わりにネット麻雀なんかしてたら、
遅くなっちゃいました、てへっ･･･」

「『てへっ』じゃないんだから、まったく…」

「でも、ほら、ちゃんとこの通り、集金してきましたからっ！」

「…ちょっとこっちおいで･･･」

「なんですか～？」

「これを見てよ」

「えっ?このお金は･･･」

「さっきね、あんたが落としたお金だって、お友達が届けに来たよ」

「そ、そんな･･･」

「それなのに、なんで、あんたはお金を持って帰ってきたの？
まさか、盗んだりしたわけじゃ･･･」

「…大変だ、お金、掏られたんじゃなかったんだ･･･」

「ぶつぶつ言ってないで、どうなっているのか、ちゃんと説明なさい！」

「ごめんなさ～い
私、大事なお金を落とさないように持って帰らなきゃと思って
ポケットに入れてたんだけど、橋を通りかかった時に、人とぶつ
かって、その時に掏られたに違いないと思っちゃって、お姉様に
申し訳がない、橋から身を投げようとした所へ、通り掛った魔術
師風の方が私を抱き止めて、『どういう訳で死のうとしてるの』と
尋ねられたから、こうこうでと申すと、『それは気の毒ね、ここに
お金がある。これをあなたにあげるから、今度こそ盗まれない
ように姉さんのところへ往きなさい。しかしそれはただの金じゃ
ない、長年連れ添ったペットが身と引き換えにこさえてくれた
お金だけれども、これをあなたにあげるから！』とおっしゃって、
ご親切なお方に戴いて参りましたのですよ～～～」

「うわぁ～、長いセリフよく噛まなかったわね～～
いやっ！そじゃなくて・・・
（コホン）
まったくあんたって娘は･･･
その方が橋を通らなければ、今頃は･･･
ああ、こわい･･･。
本当にもう･･･。」

「ごめんなさい･･･」

「その方はあんたの命の恩人ね、なんて優しいお人なんでしょう･･･。
こんな大金をすぐに恵んで下さるなんて･･･。
ところで、そのお方は、どこのお方でなんと云うお方なの？」

「う～～ん、わかんない･･･」

「バカねぇ、あんたは～～。
こんな大金を貰って、お名前も住まいも聞かないなんて事はありませんよ」

「だって･･･お名前も住まいも聞く間がなかったんだもん･･･」

「むぅ……ペットを犠牲にしたお金とかいったわね？」

「うん、長年連れ添った、雪子姫というペットが身を犠牲にして作った
お金があるから、これをあなたにやるが、ペットはどこでどうなったか
わからないと言ってたから～」

店主は「む～～」としばらく考えていましたが、何やら思いついたらしく、
店を妹に任せるとどこかへ飛び出して行きました。

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翌朝も店主は朝早くから出かけていましたが、しばらくたって帰って
来ると、妹に声をかけました。

「出かけるよ……ついてきて」
「は～い」

二人は、狭い路地を入ったところにある一軒の長屋を見つけると、
中の様子をうかがいました。

「いったいどこでお金を使っちゃったのよ？雪子姫はどうするの？？」

「どこでって、あげちゃったよ・・・」

「お金を預けたとこをいいなさい！」

「預けたんじゃないよ、あげちまったっていったじゃない。
私だってあげたくはなかったけど、その娘が死ぬっていうんだもん・・・
人の命にかえらるわけがないじゃない！」

「へぇ～、それはそれは･･･。で、どこにやったの？」

とやりあっているところへ、











「こんにちは～、Yukarikoさんのお宅はこちらですか？」

「そうですけど、どちら様ですか？」

「わたしは、東地区で武器を商っております。
このたびは妹が大変お世話になりまして･･･」

「ああっ！あんたは昨日の・・・」

「その節はたいへんお世話になりました」

「・・・姉さんの話、本当だったんだ」

「お金を掏られたというのは妹の勘違いでした。
あなたに頂戴したお金はお返しさせて頂きます。」

「そうだんたんだ･･･まあ、よかったじゃない？」

「見たところ、あなた方は決して裕福な暮らしぶりではないのに、
なけなしのお金を見ず知らずの人に差し出すなんて、本当に
心根の優しい方ですね」

「・・・そのお金は、私が小さい時から一緒に過ごしてきたペットが、
何を勘違いしたのか私にオシャレを買うためにって、自分を犠牲に
して作ってくれたお金だったんですよ・・・。
そんなお金、自分のオシャレのためになんて使えるわけない
じゃないないですか」

「うんうん」

「私は思い知りました・・・、オシャレが買えないことなんかよりも、
あの子がいなくなる方がどんない辛いことか・・・」

「わかりますよ・・・」
















「yukarikoさん、わたしたちは、あなたのその優しい心に感動
しました。
わたしたちから、あなたへのプレゼントを差し上げます・・・」

「えいっ！」












「えっ、あ、あなたたちは・・・！？」

「どうぞ、受け取ってくださいな」





















「ああっ」

「雪子姫！！」
















「もう、どこへもいっちゃだめなんだからね！」

「Merry Christmas！Yukarikoさん、そして雪子姫・・・」

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それ以降、ファンブルグでは毎年クリスマスが近くなると、
プチだるまを売る露店が見られるようになりました。













店主に尋ねると、必ずこう答えが返ってくるんです。

「お客さん、あなたはサンタさんって信じてます？」



おあとがよろしいようで・・・











Special Thanks はこやさん